Harmonize Nature

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ピレネー

2011年5〜6月にかけてWWOOFしに行ったピレネー地方。

標高1000mくらいのところに暮らす、半自給自足生活を営むファミリーのところにお世話になった。

サランコラン(Sarrancolin)

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初めてのWWOOF。WWOOFというのはWorld Wide Opportunities on Organic Farmingsの略。単なる農家でなく、オーガニック、つまり有機栽培にこだわる農家で働く代わりに宿と食事を提供してもらう、ギブアンドテイクのシステムのこと。
大抵の先進国であれば専用のウェブサイトがあり、登録制だ。料金もウェブサイトも国によって異なる。一度登録すると、その国のホストのデータベースへはいつでもアクセスできる。気になる人がいたら、メールか電話で連絡をとる。
農業にはシーズンがあるので、ホストはいつでもWWOOFerを必要としているわけではない。従って一件ずつ、最低何週間いてほしいか、どの時期都合が悪いか、確認する必要がある。また、音楽好きとか、旅の話を聞きたいとか、色々な趣味趣向が先方にもあるので、そういうことも伝えると相性の合う人に会える確率も高くなる。

私の場合は彼氏と一緒に参加。子連れでやる人もいるらしい。それはそれでトラブルも多いようだけど。農家さんの規模も千差万別で、私たちは家庭菜園を本格的にやっているヒッピー風家族のところにお世話になった。
パリのモンパルナス駅からトゥールーズまでTGV、そこからTERでラヌムザン(Lanemmezan)の駅まで行き、ホストに車で迎えに来てもらう。ホストの家はサランコランという別の町のはずれにある。

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この家族はお父さんがピレネーの山でとれる大理石の販売の会社を経営しており、お母さんがバリバリのナチュラル志向。子供は7歳の長女に5歳の長男がいたが、どちらも「最近の学校教育は子供に勉強させすぎるから」と学校には通わせず、ホームスクーリングで育てている。
家は小高い山のてっぺんにあるので、近所に友達がいるわけでもないが、この子供たちは非常にのびのびとして、すれておらず、まっすぐ育っていた。どれだけ走り回っても騒いでも近所迷惑にならないし、自然の中で創造力は充分に培われていた。
子供たちは学校へは行かないが、習い事をしに麓の町へ行くし、そこでは友達がいる。お母さんの自給自足仲間が同じくホームスクーリングで育てている子供を連れてくることもあり、まったく世間知らずになるということもないようだった。
けれどテレビはないし、見る映画はバイオレントなシーンがないかどうか両親が厳しくチェック。何歳が限界だろうかと思ってしまった。教育内容も高度になるだろうし。

築200年という古い家には、お父さんの仕事の関係で至る所に大理石がさりげなく使われておりおしゃれだった。大理石のテーブルだと熱い鍋を直接置いても大丈夫だし、汚れもスポンジでさっと拭けば落ちる。
このお宅ではキッチン用品はとてもいいものを揃えていて、かなり本物志向だった。鍋は持ちあがるかどうかというくらい重く、カトラリーはシルバーを普段使い。決して贅沢をしているわけではなく、なんでも消費しては廃棄するサイクルからなるべく離れて暮らそうとしているという感じ。

ゴミは殆ど出さない。というのも生ごみはコンポストへ行くし、燃えるごみは暖炉で灰になるし。ゴミ捨て場に行くだけでも車に乗って下山しないといけないので、面倒というのもあるのだろう。

畑では自分たちで食べる分だけを育てているそうだけど、それにしては大きな畑で、私たちは畑の手入れや薪割りを手分けして行った。まったくの農業初心者の私は鍬とか鋤とか初めて手にして、一生懸命やったので毎日筋肉痛だったが、体中の脂肪が振り落とされていくようで気分爽快だった。植物の名前はフランス語で覚えてから辞書でひいて日本語とつなげ、その扱い方や簡単なレシピを教えてもらった。

畑の脇には温室まであり、実に色々なものを育ててはいたが、そう都合よく収穫できないものもあるので、お母さんはマルシェも定期的に利用していた。私達がいたときはいちごを箱買いしてジャムをつくっていた。
家には保存食が大量にある。ジャガイモも一冬越せるくらいあるらしい。このあたりの冬は雪深い。車で下山すらできなくなるため、お父さんはスキー板をはいて出勤し、家族は家で過ごすことになる。そのため保存食がないと死活問題になってしまう。

広大な敷地ではロバ2頭と羊40匹を飼っている。羊は草刈り要員だそうで、いつもはほったらかし。ロバは農作業要員にするはずが、まだ訓練する余裕がないとかで、単にいるだけだった。

お湯は日中太陽の熱で沸かしておいたものを使う。この素敵なボイラーシステムは当時国が補助金を出してくれたので設置したとのこと。温度調節できるし、かなり熱いお湯が出てくる。よほどどんよりとした雨の日が続かない限りぬるくなることはないそう。屋根の上に取り付けることもできるが、このお宅は築200年で屋根がかなり老朽化していたので、裏山に設置。
太陽熱だけでここまでできるとは驚きだった。設置して9年で元がとれたらしい。

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ナチュラル志向ではあるけれど昔の写真を拝見する限り、かなりのヒッピーだったことが窺い知れるこの夫婦。夜は外に出て、1本のたばこ(なのか別のものなのか)を子供が寝てから二人で吸う。朝食時のカフェ、夕食後の赤ワインとチーズは欠かさない。サラミも出るし、がちがちの菜食主義でなく、なじみやすかった。

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バニエール・ド・ビゴール(Bagnères-de-Bigorre)

最初のホストは旅行に行く予定があるので1週間以上いられないと予め言われていた。次のホスト探しが難航し困っていたら、同じようにWWOOFerを受け入れている友達に片っ端から電話して受け入れ先を探してくれた。
OKしてくれたのは隣町のバニエール・ド・ビゴールに住む6人家族。子供が2歳から8歳まで2歳刻みで4人いる家庭だ。

この家族はお父さんが大工。夫婦ともにこちらもバリバリのナチュラル派で、最初の家族に輪をかけて徹底している。というのは冷蔵庫が家にない、ベジタリアン(卵は食べる)、自宅出産、コーヒー等のカフェインの入ったものは家にない。
そしてソーラーで電力を賄い、雪解け水を利用し、ドライトイレを使う生活を目指して、山小屋を建設中だった。トイレ以外の下水はどうするかというと、垂れ流し。洗剤、石鹸、シャンプー類は100%自然に還るものを使っているので問題ないのだ。
今は田舎ではあるけれど電気も水道も来ている普通の家を借りて暮らしているが、山小屋が完成したらそっちに移るそう。今の家でも畑をやってはいるが、水道や電気などの配管が邪魔になって、耕せる場所が限られている。
問題は、お父さんのこだわりである、釘を1本も使わないという規格外の建て方を行政が認可せず、その折り合いがつかないこと。場合によっては作っても取り壊さなければならないのだそうだ。そんなに土地にやさしいものを作っても。

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レスポンヌ

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山小屋のあるところはレスポンヌという集落の、山の上。森だったところをお父さんが友達と開墾した。
木を、自然を、こよなく愛するお父さんは私といくつも変わらない。木を切る時はチェーンソーをなるべく使わず手でやると、鳥がまわりによって来て、作業している自分を自然は受け入れてくれると言っていた。機械の音がすると侵略者になるけど、そうでなく自然から少し資源をいただく方法があると。
ここには既に色々お母さんが植えた野菜や果物の木があるのだが、雑草が見事に覆いかぶさって何が何だか分からくなっている。雑草の中にもオレガノやミントのように使えるものもあるので、これは切らないで、これは抜いちゃって、という指示を頭に入れながら雑草を刈っていく。周りの雑草を取り除くと、ルバーブやラベンダーはみるみる元気になった。植物の世話はとても楽しい。

野生のハーブを使ったハーブティーもとてもおいしかった。摘んできて、そのまま沸かしたお湯に入れるだけなのに。

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最初の家庭でもここでも、なるべく何でも手作りしていた。またBioの小麦粉や豆などは他の仲間たちと共同購入していた。近所の人たちからは変わり者として好奇の目で見られがちな彼らには、横のつながりが非常に重要。そうでなくとも自給自足は一人では完結しない。助け合える人がいないと成り立たないことが見ていて分かった。

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